お中元やお祝いのお返しなど少し改まった贈り物には、かけ紙と呼ばれる紙がかけられている事があります。
そこに描かれている紐のようなものが、今回取り上げる「水引」。今では印刷で代用する場合も多くなりましたが、実際には紐状にした和紙を糊で固め、用途に応じて様々な色で染め上げたものをいいます。
一般的に慶事には紅白や金銀、弔事では黒白や銀色の水引を選びます。また、出産や昇進など、何度あってもいい事への贈り物には、繰り返し結び直せる「花(蝶)結び」を。結婚やご不幸といった1度限りの事には、ほどけない「結びきり(固結び)」で結びます。結納品やお供えの線香などの正式な贈答品には、和紙の水引を実際にかけてお渡しするのが昔からの習わしです。
皆さんも贈り物をする時は、是非水引を思い出してみてください。
水引(みずひき)
書き初め(かきぞめ)
新しい年を迎えると、気持ちも新たに、何か新しい事にチャレンジしてみたくなりますね。手軽に誰でも始められる趣味の1つとして、今改めて注目されつつあるのが書道です。日本には昔から「書き初め」という書道にまつわる行事があります。元旦の朝に初めて汲む水を使い、筆を用いて文字や絵をかく風習で、もともとは宮中の儀式でした。
本来は1月2日に行われる行事ですが、現代ではその年に初めて毛筆で書く事を、総じて「書き初め」と呼ぶ場合も多いようです。「学校の授業以来筆を持った事がない」という方も多いと思いますが、自分に合った道具と出会えれば、授業の時とはまた違う、味のある字を表現できるのも書道の楽しみの1つ。
お気に入りの筆で、新年最初の一文字を「書き初め」てみては如何でしょうか。
年賀欠礼状が届いたら
早いもので今年もあとわずかとなりました。この時期になると目にし始めるのが「欠礼状」です。
身内の方が亡くなられた事を余り知らせず、密葬など、親族だけで葬儀を執り行う方も多くなってきた昨今、「家族や親戚が亡くなった為、新年のご挨拶(年賀状)は失礼します」という欠礼の葉書で、初めて先様にご不幸があった事実を知る場合も多いかと思います。
欠礼状を頂いたら、その方へ年賀状をお送りする事は控えます。また、特にお世話になった方が亡くなられていた場合や、親しい方にご不幸があった事がわかった時は、お手紙やお線香をお送りされては如何でしょう。気持ちのこもったお便りと天然香料で作られたお香のやさしい香りが、ご遺族の心を癒し、より深い哀悼の思いを伝えてくれます。
団扇(うちわ)
震災の影響で、現在も深刻な電力不足が心配されています。企業や家庭でも例年以上に節電が叫ばれる今年の夏。冷房の温度を下げるその前に、日本の伝統工芸品・団扇や扇子で涼をとってみませんか。
団扇の起源は古く、前3世紀頃の中国には既に存在していたとされています。団扇が日本に伝えられたのは飛鳥時代頃。良質な竹がとれる場所が産地となり、地域ごとに独自の発展を遂げてきました。例えば京都の団扇は、京らしい雅なデザインと、扇面を製作した後で持ち手の柄(え)を差し込むという「差し柄」の技法で作られています。また「房州(ぼうしゅう)団扇」と呼ばれる千葉の団扇は、丸みを帯びた柄と骨が一体となっているのが特徴。何等分にも細かく割いた竹を糸で編み、涼やかな「窓」のある、目にも涼しい団扇が生み出されました。携帯には小さな扇子が便利ですが、ご自宅やオフィスでは、沢山の風を送れる大きな団扇が最適です。
団扇や風鈴等、昔ながらの道具や知恵も取り入れて、皆で「節電の夏」を乗り切りましょう。
香りを“きく”
書道・華道や茶道など、日本では古くから様々な芸道が花開いてきました。香りを楽しむ香道も、日本を代表する伝統芸道の一つ。その体系づけがなされたのは、室町時代のことと言われています。
香木(こうぼく)を一定の作法に基づき鑑賞する香道では、香りを“嗅ぐ”とは言わず“きく”と表現します。香りの種類を“利”き分ける。香りと向き合い、香りに問いかけてその答えを“聞”く。香から立ち上がる煙に思いを託し、天に“聞”き届けてもらう。あるいは、香炉で香りをきき、香炉から顔をそらした時の姿が、まるで耳を澄ましている様に見えるから…等、香りに“きく”という言葉を使うようになった背景には諸説あります。
平安の昔より、香りを楽しむことは日本の大切な生活文化の一つでした。何かとせわしない現代社会。たまには心をゆったり落ち着かせ、香りを“きく”習慣を取り入れられては如何でしょう。平安の貴族達も愛した雅で優しい香りが、疲れた現代人の心にもきっと“効”いてくれるはずです。
友禅(ゆうぜん)
着物や和小物の絵柄などで、広く親しまれてきた「友禅」。日本の風物や動物物を、独特の鮮やかな色遣いで表現した友禅模様は、日本人のみならず、現在は海外の方からも高い評価を得ています。
「友禅」という名がつけられた由来については諸説ありますが、江戸時代に活躍した扇子絵師・宮崎友禅斎という人物の名前から取られたとする説が有力です。彼が扇に描いた絵は、男女問わず幅広い層の人々からの支持を受け、やがて小袖(着物)のデザインにも影響を与えるようになりました。友禅斎の画風で染め上げられた衣類は後に「友禅染め」と呼ばれるようになり、「京友禅」や「加賀友禅」「江戸(東京)友禅」など、地域ごとの特色を発揮して発展。日本を代表する染色法として、今日に至るまで独自の進化を続けています。
友禅の模様は千代紙などのデザインには勿論、現在ではデジタルアートの世界などでも活用されているようです。日本の伝統文化が、それぞれの時代でどう生かされているかを見てみるのも面白いかもしれませんね。